数字から言います。ニュージーランドで雇用されて働く人には、法律で定められた最低限の権利があります。年次有給休暇は4週間、公休日は年12日、有給の病気休暇は勤続6ヶ月後から年10日です。
そして重要なのはここです。ニュージーランド雇用省は、これらの最低権利について「雇用契約に書かれていなくても」「雇用契約がそれらを相殺しようとしても」「雇用契約がこれらの最低を下回らせようとしても」「雇用契約を持っていなくても」適用されると明記しています。
つまり、契約書に書いていないから権利がない、ということにはなりません。そして雇用主は雇用契約を書面で渡す義務があります。
論点は1つです。あなたは自分に何の権利があるかを知っていますか。知らなければ、権利が守られていなくても気づけません。
この記事は、ニュージーランドで働く人・働く予定の人に向けて書いています。
この記事を書いている立場:運営者はカナダのワーキングホリデーで12ヶ月を過ごしましたが、ニュージーランドには渡航経験がありません。本記事は体験談ではなく、ニュージーランド雇用省(Employment New Zealand)の公開情報を確認して整理したものです。出典と確認日を明記しています。制度は変更され、個別の適用は雇用形態や契約内容によって異なります。本記事は法的助言ではありません。実際の判断にあたっては必ず雇用省の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家や相談窓口にご相談ください。
結論:法定の最低権利は「契約より強い」
法律で定められた最低の権利と責任は、次のいずれの場合であっても、すべての従業員に適用されるとされています。
- 雇用契約に書かれていない場合
- 雇用契約がそれらを互いに相殺しようとする場合
- 雇用契約がこれらの最低を下回らせようとする場合
- 雇用契約を持っていない場合(ただし雇用主には交付する義務がある)
雇用主から「うちはそういう決まりだから」と言われたとき、その内容が法定の最低を下回っていれば、法のほうが優先します。
そして雇用省は「雇用契約は、法律上の最低権利と少なくとも同等以上の条件でなければならない」としています。下回る契約に同意していても、それによって権利が消えるわけではありません。
だからまず、自分に何の権利があるかを知ることが先です。知らなければ、下回っていることにも気づけません。
すべての従業員が書面の雇用契約を受け取れる
雇用省は、フルタイム、パートタイム、常勤(permanent)、有期(fixed-term)、カジュアル(casual)——すべての従業員が、雇用契約(個別または集団)の写しを書面で受け取る権利があるとしています。
つまり「短期のバイトだから契約書はない」という説明は、この基準に照らすと適切ではありません。
出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日))
賃金が支払われない、聞いていた条件と違う、シフトを一方的に減らされた——こうした場面で最初に問われるのは「何を合意していたか」です。
口約束だけだと、そこで詰まります。だから受け取ってください。渡されないなら「書面の雇用契約をもらえますか」と聞く。これは請求できる立場にあるということです。
そして受け取ったら、必ず自分でも保管してください。職場トラブルへの備えは職場トラブルの記事で扱っています。
休暇に関する最低権利
| 項目 | 法定の最低 | 補足 |
|---|---|---|
| 年次有給休暇 | 年4週間 | これを上回る契約もあり得る |
| 公休日 | 年12日 | — |
| 公休日に働いた場合 | 1.5倍(time and a half)の支払い | これを上回る契約もあり得る |
| 有給の病気休暇 | 勤続6ヶ月後から年10日 | 最大20日まで繰り越せる |
| 忌引休暇(有給) | 特定の家族について3日、その他の人について1日 | — |
| 育児休業 | 最大52週 | — |
| 陪審義務 | 無給の休暇 | 有給とする契約もあり得る |
出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日))。制度は変更されます。適用は雇用形態・契約内容によって異なります。
雇用省は、最低の病気休暇が2021年7月24日から年5日から10日に増加したと記載しています。そして追加の5日は、次の権利発生日に得られるとされています。それは勤続6ヶ月に達した後、または病気休暇の権利の応当日(前回権利が発生してから12ヶ月後)のいずれかです。
出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日))
病気休暇は勤続6ヶ月後からとされています。つまり同じ職場で6ヶ月働いていなければ、この権利は発生していません。
これは職場を転々とする働き方だと、実質的に使えないということです。短期の仕事を重ねる予定なら、体調を崩したときに収入が止まる前提で資金計画を立ててください。
収支の作り方は現地で貯める記事で扱っています。
休憩と賃金に関する最低権利
雇用省は、休憩(rest break)と食事休憩(meal break)は提供されなければならず、rest break は有給であるとしています。
食事休憩を有給とするかは、契約で上乗せされる例として挙げられています。つまり法定では、rest break が有給であることが最低ラインです。
賃金については該当する最低賃金が支払われなければならないとされ、残業についても最低賃金以上と示されています。また賃金の支払いは通貨で行われることが最低権利として挙げられています。
出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日))
現場が忙しいと、休憩が取れないまま働き続けることがあります。ところが休憩は「提供されなければならない」ものとされています。
やること:実際に働いた時間と休憩の有無を、自分で記録する。後から確認するには記録が要ります。雇用省は、休暇や賃金・労働時間について正確な記録を保つことも、最低権利が適用される領域として挙げています。
NZの賃金水準は最低賃金の記事で扱っています。
安全と、扱われ方に関する権利
- 従業員の最低の権利を定めること
- すべての従業員が職場で安全であり、違法な差別・いじめ・ハラスメントを受けないようにすること
- 雇用主が誠実に行動すること(従業員も同様)
「ワーホリだから」「英語が下手だから」という理由で、扱いが最低基準を下回ってよいということにはなりません。差別やハラスメントを受けないことは、明示的に挙げられている保護です。
そして雇用省は、最低の雇用権利を受け取っていないと思われる場合や、権利についてもっと知りたい場合には、連絡するよう案内しています。相談先があるということを、知っておいてください。
安全面の備えは安全の記事でも扱っています。
知っておくと交渉に使える構造
| 法定の最低権利 | 交渉できる条件 | |
|---|---|---|
| 性質 | 下回れない | 上乗せできる |
| 例 | 年4週間の有給 | 年5週間の有給 |
| 例 | 公休日勤務は1.5倍 | 2倍などの高い率 |
| 例 | 6ヶ月後から病気休暇10日 | 6ヶ月待たずに付与、10日超 |
| 例 | 最低賃金 | 最低賃金を超える賃金 |
| 例 | rest break は有給 | 食事休憩も有給/回数や長さの上乗せ |
出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」に示された最低権利と交渉例にもとづく(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日))
求人票に書かれている条件が「法定どおり」なのか「上乗せがある」のかを見分けられるようになります。
たとえば「有給4週間」と書かれていても、それは法定の最低であって、その職場の魅力ではありません。一方「有給5週間」なら上乗せです。この区別ができると、条件の良し悪しを正しく判断できます。
仕事探しの実務は仕事探しの記事で扱っています。
運営者の視点:知らないと、比べることもできない
運営者はカナダで働きましたが、当時、現地の労働法をきちんと読んだことはありませんでした。雇用契約の内容も、渡されたものにサインしただけです。
幸い大きな問題は起きませんでした。ところがそれは運が良かっただけです。もし条件が下回っていても、比べる基準を持っていなかったので気づけなかったはずです。
そして気づいたのは、これが「交渉の材料」でもあるということです。法定の最低を知っていれば、求人の条件が「普通」なのか「良い」のかが判断できる。知らなければ、すべてが「そういうものか」で流れていきます。
読むのは1回でいい。渡航前に、その国の労働当局のページを30分だけ読んでおく。この30分は、1年間ずっと効き続けます。
よくある失敗
失敗①:契約書をもらわない
雇用形態を問わず、書面で受け取る権利があるとされています。渡されないなら請求してください。
失敗②:「契約にないから権利がない」と考える
法定の最低権利は、契約に書かれていなくても適用されるとされています。契約が下回ろうとしても、法が優先します。
失敗③:休憩が取れないのを当たり前にする
休憩は提供されなければならないものとされ、rest break は有給とされています。実際の労働時間と休憩を記録してください。
失敗④:病気休暇を前提に資金計画を立てる
勤続6ヶ月後からとされています。短期の仕事を重ねる働き方では、実質的に使えません。
失敗⑤:法定どおりの条件を「良い条件」と誤解する
有給4週間は法定の最低です。上乗せがあるかどうかで求人を比べてください。
失敗⑥:おかしいと思っても相談先を知らない
雇用省は、最低権利を受け取っていないと思われる場合に連絡するよう案内しています。相談先があることを知っておいてください。
今日からできる3つのこと
- ①雇用省のページを30分読む:渡航前にできて、1年間効きます
- ②契約書を受け取り、自分でも保管する:トラブル時に最初に問われます
- ③労働時間と休憩を自分で記録する:後から確認するには記録が要ります
法定の最低権利は、知っている人にだけ機能します。知らなければ、下回っていても気づけません。
そして知っていれば、求人を比べる基準にもなります。守るためだけでなく、選ぶために読んでおいてください。
本記事は法的助言ではありません。記載内容はニュージーランド雇用省(Employment New Zealand)の公開情報を確認日:2026年8月13日(該当ページの最終改訂:2023年12月22日)に確認して整理したものであり、制度は変更されます。また個別の適用は雇用形態・契約内容・個人の事情によって異なります。日数・割合・期間はいずれも本記事の確認時点のものであり、将来にわたって保証されるものではありません。実際の判断にあたっては、必ず雇用省の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家または公的な相談窓口にご相談ください。
主な出典:Employment New Zealand「Minimum rights of employees」
よくある質問
ワーキングホリデーでもニュージーランドの労働者の権利は適用されますか?
ニュージーランド雇用省は、フルタイム、パートタイム、常勤、有期、カジュアルを問わずすべての従業員が雇用契約の写しを書面で受け取る権利があるとしており、法律で定められた最低の権利と責任もすべての従業員に適用されるとしています。雇用形態や国籍によって最低基準が下がるという記載はありません。ただし個別の適用は雇用形態や契約内容によって異なるため、詳細は雇用省の公式情報でご確認ください。
雇用契約に書かれていない権利は主張できませんか?
雇用省は、法律で定められた最低の権利と責任は、雇用契約に書かれていない場合、契約がそれらを互いに相殺しようとする場合、契約がこれらの最低を下回らせようとする場合、そして雇用契約を持っていない場合であっても適用されるとしています。また雇用契約は法律上の最低権利と少なくとも同等以上の条件でなければならないとされています。
年次有給休暇と病気休暇は何日ありますか?
雇用省によると、法定の最低は年次有給休暇が年4週間、有給の病気休暇が勤続6ヶ月後から年10日で、病気休暇は最大20日まで繰り越せるとされています。なお最低の病気休暇は2021年7月24日から年5日から10日に増加しており、追加の5日は次の権利発生日、つまり勤続6ヶ月に達した後または病気休暇の権利の応当日に得られるとされています。
公休日に働いた場合、割増はありますか?
雇用省は、公休日が年12日あり、公休日に働いた場合はtime and a half、つまり1.5倍の支払いが法定の最低であるとしています。これを上回る率、たとえば2倍などを雇用契約で定めている例も、交渉された条件として挙げられています。
休憩が取れないのですが、これは普通ですか?
雇用省は、休憩(rest break)と食事休憩(meal break)は提供されなければならず、rest breakは有給であるとしています。現場が忙しいという理由で提供されないことが当たり前になっている場合、最低権利の観点からは問題があり得ます。実際に働いた時間と休憩の有無を自分で記録しておいてください。後から確認するには記録が必要です。
条件がおかしいと感じたら、どうすればいいですか?
雇用省は、最低の雇用権利を受け取っていないと思われる場合や、権利についてもっと知りたい場合には連絡するよう案内しています。まずは自分に何の権利があるかを知り、実際の労働時間や賃金の記録を残したうえで、公式の相談窓口に相談してください。書面の雇用契約を受け取って保管しておくことも重要です。
帰国後のキャリアを、数字で設計する
運営者は渡航前年収450万円から、帰国後に大手メーカーへ転職して800万円台になりました。使ったエージェントと3社並行の進め方をまとめています。
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本記事の制度・日程・金額は執筆時点で公開情報を確認したものです(確認日:2026年8月8日)。開催内容や応募条件は変更される場合があるため、実際の応募前に CareerForum.Net(CFN)の公式情報を必ずご確認ください。本記事は特定の企業への就職や内定を保証するものではありません。