数字から言います。オーストラリアの年金(スーパーアニュエーション)の払い戻しは、出国して、かつビザが失効した後でなければ請求できません。帰国前に受け取ることはできない仕組みです。
ここに落とし穴があります。受け取るのは帰国後なのに、受け取る先の口座は現地にある。帰国前に「もう使わないから」と現地の銀行口座を解約してしまうと、還付金の受け取りで詰まります。
論点は1つです。何を、どの順番で閉じるのか。帰国時のお金の処理は、金額の大きさより順番のミスで損が出ます。
この記事は、ワーホリの帰国が視野に入ってきた人に向けて書いています。制度の詳しい説明は各国の記事に譲り、ここは順番と時期に集中します。
結論:閉じるのは最後。受け取るのが先
- ①受け取るもの:税の還付、年金の払い戻し、最後の給与、住居のデポジット
- ②残すもの:受け取りに必要な現地の銀行口座、連絡が取れるメールアドレスと電話番号
- ③止めるもの:携帯の契約、サブスクリプション、ジムなどの月額サービス
- ④最後に閉じるもの:現地の銀行口座(①がすべて完了してから)
この順番を守るだけで、帰国時のお金のトラブルはかなり減ります。逆によくある失敗は、帰国直前に口座もカードも一気に解約してしまうことです。
オーストラリアの年金(スーパー)は、帰国後にしか請求できない
オーストラリアで働くと、雇用主が「スーパーアニュエーション」という年金制度に拠出します。ワーキングホリデーなどの一時滞在者は、帰国時にこれを払い戻し請求できる仕組みがあり、DASP(Departing Australia Superannuation Payment)と呼ばれます。
- 一時滞在者向けのビザで働いて、スーパーが積み立てられていること
- ビザが失効している(または取り消されている)こと
- オーストラリアを出国していること
- 他に有効なオーストラリアのビザを持っていないこと
- オーストラリアまたはニュージーランドの市民、オーストラリアの永住者ではないこと
出典:オーストラリア税務当局(ATO)Departing Australia superannuation payment(確認日:2026年8月8日)
帰国したからといって、すぐに請求できるわけではありません。ビザが失効していることが条件です。ワーホリビザの有効期限より早く帰国した場合、期限が来るまで待つことになります。
つまり「帰国してから数ヶ月後に手続きをする」という前提で準備しておく必要があります。そのときに現地の銀行口座もメールアドレスも生きていなければ、手続きが進みません。
なお、口座残高が一定額未満の場合は必要書類が簡略化される扱いがあるとされています。金額や具体的な手続きは変更されるため、必ずATOの公式情報と加入している基金の案内で確認してください。制度の詳細は現地の税金ガイドでも扱っています。
帰国前後のタイムライン
| 時期 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 帰国3ヶ月前 | 年金の加入先(基金)を確認する。連絡先を控える | 複数の職場で働くと基金が分散していることがある |
| 帰国2ヶ月前 | 税の還付(タックスリターン)の準備。給与明細と源泉徴収の書類を集める | 離職後に書類を集めるのは難しくなる |
| 帰国1ヶ月前 | 住居のデポジット返還を確定させる。退去の記録を残す | 帰国後に交渉するのは実質的に不可能 |
| 帰国2週間前 | 携帯・サブスク・ジムなどの月額契約を解約する | 止め忘れは帰国後も課金が続く |
| 帰国直前 | 銀行口座は残す。ネットバンキングにログインできる状態を確認 | 還付金の受け取り先になる |
| 帰国直後 | 日本の住民票・年金・健康保険の手続き | 期限があるものがある |
| ビザ失効後 | 年金の払い戻しを請求する | ここで初めて条件を満たす |
| すべて着金後 | 現地の銀行口座を解約する | ここまで閉じない |
現地の銀行口座をどう扱うか
残すときの注意点
- 口座維持手数料:残高が一定額を下回ると手数料がかかる口座があります。手数料で残高が削られ続けることがあるので、条件を確認してください
- 連絡先の更新:住所を日本の住所に変更できるか、銀行に確認しておく。届かない郵便が続くと口座が凍結されることがあります
- ネットバンキングのログイン:現地の電話番号に届く認証を使っている場合、番号を解約するとログインできなくなります。認証方法を先に切り替えてください
- 休眠口座の扱い:一定期間動きがないと休眠扱いになる制度があります。条件を確認しておく
現地の携帯番号を解約すると、ネットバンキングの二段階認証が受け取れなくなることがあります。すると還付金が着金しても引き出せません。
回避法:①認証方法をメールやアプリに切り替えておく ②または番号を数ヶ月だけプリペイドで維持する。数ヶ月分の維持費より、受け取れない還付金のほうが大きい場合があります。
残った外貨をどうするか
帰国時に現地通貨が残ることはよくあります。選択肢は3つです。
| 選択 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 日本へ送金する | まとまった額がある場合 | 送金手数料と為替。方法によって手取りが変わります |
| 現地口座に置いたままにする | 還付金の着金を待つ場合 | 口座維持手数料。為替が動くリスク |
| 空港で両替する | 少額の現金だけ | レートが不利になりやすい。大きな額には向きません |
送金の手数料と為替の比べ方は海外送金の記事にまとめています。「手数料無料」と書かれていても為替レートに上乗せされていることがあるため、最終的に日本の口座に着金する額で比べてください。
日本側で必要になる手続き
出発前に住民票を抜いた人は、帰国後に戻す手続きが必要になります。出発前の手続きの裏返しですが、期限があるものがあるので早めに確認してください。
- ①転入届:住民票を抜いていた場合、帰国後に転入の手続きが必要です。期限が定められています
- ②国民健康保険:加入の手続きをしないと医療費が全額自己負担になります
- ③国民年金:任意加入していたか、免除・納付猶予を受けていたかで扱いが変わります
- ④税金:渡航前の年の所得や、帰国後の収入によっては確定申告が必要になる場合があります
国別に、帰国時に確認するもの
還付や年金の仕組みは国によって異なります。ここでは「何を確認しに行くか」の目印だけを挙げます。制度の詳細と手続きは、必ず各国の公的機関の情報で確認してください。
| 国 | 帰国時に確認するもの |
|---|---|
| オーストラリア | 税の申告と還付/年金(スーパー)の払い戻し/源泉徴収に関する書類/加入していた基金の特定 |
| カナダ | 税の申告と還付/勤務先が発行する年間の収入証明/口座と連絡先の維持 |
| ニュージーランド | 税の精算/勤務先の記録/退職年金制度に加入していた場合はその扱い |
| イギリス・アイルランド | 税の精算/年金制度への拠出があった場合の扱い/口座の維持条件 |
どの国でも、還付の手続きには収入と源泉徴収を示す書類が必要になります。これらは在職中か離職直後が最も入手しやすく、時間が経つほど難しくなります。
回避法:辞めると決めた時点で、雇用主に「帰国後の手続きに必要な書類を出してほしい」と伝える。あわせて担当者の連絡先を控えておくと、後から不足が判明したときに動けます。
帰国後に連絡が取れる状態を作っておく
還付や年金の手続きは、帰国後に数ヶ月かかることがあります。その間、相手からあなたに連絡が取れる状態を維持しておく必要があります。
- メールアドレス:現地のプロバイダのアドレスを使っている場合、解約すると受け取れなくなります。フリーメールに切り替えておく
- 郵送先の住所:日本の住所を登録できるか確認する。書類が郵送で届く手続きもあります
- 電話番号:前述のとおり、認証に使っている場合は特に注意が必要です
- 信頼できる現地の知人:郵便物の転送を頼めるなら、それも選択肢です
次の国へ行く予定がある場合
二カ国目のワーホリや、別の国での就労を考えている場合、帰国時の処理は変わります。
たとえばオーストラリアの年金の払い戻しは「他に有効なオーストラリアのビザを持っていないこと」が条件とされています。セカンドビザの取得を考えているなら、請求のタイミングを誤ると条件を満たさなくなる可能性があります。
回避法:次の予定が決まっていないうちに、取り返しのつかない手続きをしない。迷っているなら、口座も番号も維持したまま日本へ戻るほうが選択肢が残ります。維持コストは、やり直すコストより小さいのが普通です。
逆に、その国へは当面戻らないと決めているなら、還付をすべて受け取ったうえで整理してしまうほうがすっきりします。判断の分かれ目は「次があるかどうか」です。
帰国後3ヶ月のお金のカレンダー
| 時期 | やること |
|---|---|
| 帰国1週目 | 転入届。国民健康保険の手続き。期限があるものを最優先 |
| 帰国2〜4週目 | 年金の扱いを確認。現地口座のログインと認証を再確認 |
| 1〜2ヶ月目 | 税の還付の進捗を確認。書類の不足がないか |
| ビザ失効後 | 年金の払い戻しを請求。ここが忘れられやすい |
| 着金後 | 日本へ送金。そのうえで現地口座を解約 |
帰国直後は生活の立て直しと就職活動で忙しく、事務処理は後回しになりがちです。カレンダーに入れておかないと、そのまま忘れます。金額が大きいものほど、時間が経ってからでは動きにくくなります。
帰国時のお金でよくある失敗
失敗①:帰国前に現地の口座を解約する
最も多く、最も損の大きい失敗です。税の還付も年金の払い戻しも、受け取り先が必要です。「もう使わないから」と閉じてしまうと、後から口座を作り直すのは現地にいない状態では困難です。
失敗②:年金の加入先を把握していない
複数の職場で働くと、雇用主ごとに別々の基金へ拠出されていることがあります。把握していないと、一部を請求し忘れます。働き始めた時点で、どの基金かを記録しておいてください。
失敗③:源泉徴収の書類を受け取らずに離職する
還付の手続きには、収入と源泉徴収額を示す書類が必要になります。離職後に元の雇用主へ連絡を取るのは、想像以上に難しいことがあります。辞める前に受け取ってください。
失敗④:サブスクを止め忘れる
携帯、動画配信、ジム、クラウドサービス。少額でも、気づかないまま数ヶ月課金が続くことがあります。解約の証跡もあわせて保存しておいてください。
運営者はカナダから帰国しましたが、帰国時の処理で強く感じたのは、ミスの多くが後から取り返せないという点でした。
日本にいれば、書類を取り寄せることも、窓口に行くことも、電話をかけ直すこともできます。しかし帰国後は時差があり、現地の電話番号もなく、郵便も届きません。「あとでやろう」が実質的に「やらない」になります。
だから帰国前の1〜2ヶ月は、遊びや別れの挨拶と同じくらいの優先度で事務処理に時間を割いてください。金額としては数万円から数十万円の話ですが、取り返せないぶん、実感としてはそれ以上に重く残ります。
今日からできる3つのこと
- ①年金の加入先(基金)を今すぐ確認する:複数あるかもしれません。働いた職場の数だけ確認する
- ②ネットバンキングの認証方法を確認する:現地の電話番号に依存していないか
- ③口座を閉じるのは最後、と決めておく:これだけで最大の失敗は避けられます
帰国時のお金の処理は、難しくはありません。ただし順番を間違えると取り返せない、という性質があります。閉じるのは最後。受け取るのが先です。
よくある質問
オーストラリアの年金(スーパー)は帰国前に受け取れますか?
受け取れません。オーストラリア税務当局の情報によると、DASPの請求にはビザが失効していること、オーストラリアを出国していること、他に有効なオーストラリアのビザを持っていないことなどが条件とされています。ただし申請の手続き自体は出国前に始めておくことができます。制度は変更される場合があるため、必ずATOの公式情報で最新の内容を確認してください。
現地の銀行口座はいつ解約すればいいですか?
税の還付や年金の払い戻しがすべて着金してからです。これらは受け取り先の口座を必要とするため、帰国直前に解約してしまうと受け取れなくなります。帰国後に現地の口座を作り直すのは実質的に困難なため、閉じるのは最後にしてください。
現地の携帯番号は解約して大丈夫ですか?
注意が必要です。ネットバンキングの二段階認証が現地の電話番号に届く設定になっている場合、番号を解約するとログインできなくなり、還付金が着金しても引き出せなくなることがあります。認証方法をメールやアプリに切り替えるか、数ヶ月だけプリペイドで番号を維持することを検討してください。
帰国後に日本で必要な手続きは何ですか?
住民票を抜いていた場合は転入届、国民健康保険の加入手続き、国民年金の扱いの確認、場合によっては確定申告です。期限が定められているものがあるため、詳細はお住まいの市区町村と年金事務所の案内で確認してください。
残った外貨はどうするのがいいですか?
まとまった額があれば送金、還付の着金を待つなら現地口座に置いたまま、少額の現金だけ空港で両替という使い分けが現実的です。空港の両替はレートが不利になりやすいため大きな額には向きません。送金は手数料無料と表示されていても為替レートに上乗せされていることがあるため、日本の口座に着金する額で比べてください。
帰国後のキャリアを、数字で設計する
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本記事の制度・日程・金額は執筆時点で公開情報を確認したものです(確認日:2026年8月8日)。開催内容や応募条件は変更される場合があるため、実際の応募前に CareerForum.Net(CFN)の公式情報を必ずご確認ください。本記事は特定の企業への就職や内定を保証するものではありません。