ワーホリの医療費|NZのACCは訪問者も対象、豪州の相互協定に日本は非加入

NZと豪州の医療カバー|日本人が対象になる範囲の調べ方

ニュージーランドとオーストラリア。隣り合った2か国ですが、日本人が医療にかかったときの扱いは正反対です。

ニュージーランド。事故でケガをした場合、ACC(事故補償公社)が訪問者も含めて誰でもカバーします。ACCは「訪問者は、ニュージーランド滞在中にケガをした場合、他の誰とでも同じACCのカバーを受けます。居住者でなくても関係ありません」と記載しています。

オーストラリア。豪州は11か国と相互医療協定(Reciprocal Health Care Agreements)を結んでいますが、その11か国に日本は含まれていません。

つまり同じワーホリでも、渡航先によって「制度が受け止めてくれる範囲」がまったく違います。

この記事では、公的資料で確認できる範囲を整理します。保険をどう考えるかの前提になる部分です。

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先に、2か国を並べます

日本人ワーホリの扱い
ニュージーランド事故によるケガはACCがカバー(国籍・ビザを問わない)
オーストラリア相互医療協定の対象外(日本は11か国に含まれない)

この差がどこから来るのか

2つの制度は、そもそも設計思想が違います。

ニュージーランドのACCは「事故」を軸にした制度です。誰が起こした事故か、誰の過失かを問わず、ニュージーランドで起きた事故によるケガを補償します。だから対象を国籍やビザで区切っていません。

オーストラリアの相互医療協定は「国と国の取り決め」です。相手国と協定を結び、互いの国民が訪問したときに公的医療を使えるようにする仕組みです。だから協定を結んでいない国の国民は対象外になります。

前者は「どこで起きたか」で決まり、後者は「どこの国籍か」で決まる。この違いが、日本人にとっては真逆の結果を生んでいます。

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ニュージーランド:ACCは訪問者も同じ扱いです

「居住者でなくても関係ありません」

ACC(Accident Compensation Corporation/事故補償公社)は、こう記載しています。「訪問者は、ニュージーランド滞在中にケガをした場合、他の誰とでも同じACCのカバーを受けます。あなたが居住者でなくても関係ありません」。

そして制度の性格も明示されています。ACCは無過失(no-fault)スキームであり、「ニュージーランドで事故によりケガをしたすべての人を、訪問者を含めてカバーします」とされています。

「無過失」という言葉が、この制度の核心です。誰かの不注意で起きた事故でも、自分の不注意で起きた事故でも、扱いが変わりません。誰が悪いかを確定させなくても、補償が動きます。

これはワーホリで想定される場面と、そのまま重なります。スキー場での転倒、ハイキング中の滑落、自転車での接触、職場での作業中のケガ。いずれも「事故によるケガ」です。

そしてカバーの範囲は、ビザの種類に依存しません。観光であれ、ワーキングホリデーであれ、学生であれ、ニュージーランドにいる間に起きた事故であることが基準です。

ただし、カバーされない領域があります
ACCは万能ではありません。カバーされない範囲が明確に定められています。
まず、除外が明示されている事故です。ACCは「ニュージーランドへ向かう途中、またはニュージーランドから離れる途中に起きた事故によるケガはカバーできません。それがニュージーランドの領海や領空の中であってもです」としています。
さらに具体的です。「船や航空機に乗り降りする際のタラップ(gangplank)、エアブリッジ、またはこれに類する設備の上で起きた事故」も対象外とされています。
飛行機を降りるその瞬間まで、まだ対象外だということです。境界がここまで細かく定義されていること自体が、この制度の性格を表しています。
そしてもうひとつ、より重要な限界があります。ACCが扱うのは「事故によるケガ」です。病気は対象ではありません。
インフルエンザ、盲腸、持病の悪化、歯の痛み——これらは「事故」ではありません。ワーホリ中に起こることの多くは、実は事故ではなく病気です。
ACC自身も、この点を明記しています。「訪問者は、ACCがカバーしないものについて、依然として旅行保険が必要です」。制度の側が「保険は別に要る」と言っているということです。
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オーストラリア:協定国は11か国、日本は入っていません

公表されている国のリスト
オーストラリアのServices Australiaは、相互医療協定(Reciprocal Health Care Agreements)について「オーストラリアは11か国と協定を結んでおり、オーストラリア人がその国を訪れたとき、およびそれらの国からの訪問者がオーストラリアを訪れたときに、医学的に必要なケアの費用をカバーします」としています。
11か国は次のとおりです。
  • ベルギー/フィンランド/イタリア/マルタ/オランダ
  • ニュージーランド/英国/ノルウェー/アイルランド/スロベニア/スウェーデン
日本は含まれていません。
つまり日本人がオーストラリアでワーキングホリデーをする場合、この協定による公的医療の恩恵は受けられないということです。治療費は、原則として自己負担か、加入している保険による負担になります。
これは知らないまま渡航している人が多い部分だと考えられます。「先進国だから医療は何とかなる」という感覚は、この制度の前では通用しません。

協定国であっても、内容は同じではありません

興味深いのは、11か国の中でも扱いが分かれている点です。Services Australiaの記載から読み取れる違いを整理します。 同じ「協定国」でも、期間もカバー範囲も違うということです。
そして全体に共通する除外も明記されています。「相互医療協定は、公立病院または私立病院における私費患者(private patient)としての治療費はカバーしません」。また「医療を受けることを目的としてオーストラリアを訪れる人は対象外」とされています。
制度が守っているのは「滞在中に予期せず必要になった医療」であって、医療そのものを目的とした渡航ではない、という線引きです。 あわせて読みたいワーホリの現地税金3か国比較|制度の型の見分け方ワーホリの現地税金は、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドで制度の型がまったく違います。税年度の区切りも、年度末に自

この2つの事実が、保険の考え方を変えます

渡航先によって、保険に求める役割が違います

ニュージーランドの場合。事故によるケガはACCが受け止めます。だから保険に求める中心は「病気」と「ACCがカバーしない部分」になります。

オーストラリアの場合。相互協定の対象外である以上、事故も病気も、原則として自分の側で備えることになります。

これは「どちらの国の保険料が高くなるべきか」という話ではありません。保険会社の商品設計はそれぞれの事情で決まります。ここで言いたいのは、同じ商品を見るときに「何を埋めようとしているのか」が国によって違うということです。

そしてビザの条件として保険加入が求められる国もあります。その場合、加入は選択ではなく要件です。

本記事では、どの保険商品が適切かの判断は示しません。補償内容・免責・既往症の扱いは商品ごとに大きく異なります。海外保険の全体像比較の観点は別の記事で扱っています。

「制度がある」と「自分が使える」は別です
この記事で見た2つの事例は、同じ教訓を示しています。
ニュージーランドのACCは、非常に手厚い制度です。ですが病気は対象外で、入出国の途上も対象外です。制度があることと、自分のケースが当てはまることは別です。
オーストラリアには相互医療協定があります。ですが日本は締結国ではありません。制度が存在することと、自分が対象であることも別です。
これはこのサイトが繰り返し確認してきた構造と同じです。ニュージーランドの賃貸では、契約書に署名していない人は法の対象外でした。日本の雇用保険では、語学留学は受給期間延長の理由になりませんでした。
制度は誰にでも開かれているわけではなく、必ず線が引かれています。そしてその線の内側にいるかどうかは、渡航前に確認できます。
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渡航前に確認する3つ

ニュージーランドでは、事故によるケガについて、訪問者も居住者と同じACCのカバーを受けます。国籍もビザの種類も問われません。ただし病気は対象外で、入出国の途上も対象外です。

オーストラリアは11か国と相互医療協定を結んでいますが、日本は含まれていません。公的医療による軽減は期待できない前提で考える必要があります。

この2つは、渡航先を選ぶ理由にはならないかもしれません。ですが渡航前に備える内容は、確実に変わります。

そして知っておくことのいちばんの価値は、実際に起きたときに動けることです。ニュージーランドで転んで骨折したとき、それがACCの対象だと知っていれば、最初の一歩が変わります。

この記事について:運営者はカナダで12ヶ月、米国で半年を過ごしましたが、オーストラリア・ニュージーランドには渡航していません。本記事は制度を公的資料から整理したものであり、現地での受診体験は含みません。
出典は、ニュージーランドACC(Accident Compensation Corporation)「If you're a visitor injured in New Zealand」「What we cover」、およびオーストラリアServices Australia「Reciprocal Health Care Agreements」です(いずれも2026年8月時点で確認)。
本記事では、ACCが具体的にどのケガをどこまで補償するか、自己負担が生じる範囲、請求の手続き、治療内容ごとの判断、オーストラリアの各協定国における個別の適用条件、Medicareへの登録手続き、保険商品の補償内容の適否については扱っておらず、判断も示していません。またカナダ・英国など他国の医療制度については本記事では確認していません。州や地域によって制度が異なる国もあります。
協定国の一覧・制度の内容・カバー範囲は変更されます。渡航前に必ず各国の公式ページで最新の情報を確認してください。本記事は医療・保険に関する助言ではありません。加入する保険の補償内容については、必ず約款および保険会社にご確認ください。体調やケガに関する判断は、現地の医療機関にご相談ください。

関連:カナダの公的医療は州ごとの制度です
BC州のMSPには居住確立の月の残り+2か月の待機期間があり、6か月以上有効な就労許可を持つ人はみなし居住者として扱われ得ます。アルバータ州は12か月住む意思と、入国書類の残り6か月が条件です。
カナダの公的医療|BC州の待機期間とアルバータの6か月ルール
関連:パスポートを持ち歩かない方法があります
NZのKiwi Access Cardは公式案内で国際訪問者も対象とされ、約20営業日で届き有効期間10年。豪州NSWのPhoto Cardは運転免許がなくても取得できます(ただし一部の状況では使えないと明記)。
現地の写真付き身分証|NZのKiwi Access CardとNSWのPhoto Card

制度を知っていることと、窓口で使えることは別です。「これは対象になりますか」「書面でもらえますか」——聞き返せるかどうかで、受けられる扱いが変わります。

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病院は「登録してから」の国が多くあります

イングランドは誰でも無料で登録でき、身分証も住所証明も在留資格の証明も不要とされています(通常5日以内)。ニュージーランドは受給資格がある人のみ。

海外で病院にかかる手順|かかりつけ医の登録

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よくある質問

ニュージーランドで事故に遭った場合、ワーホリでも補償されますか?

ACC(事故補償公社)は「訪問者は、ニュージーランド滞在中にケガをした場合、他の誰とでも同じACCのカバーを受けます。あなたが居住者でなくても関係ありません」と記載しています。ACCは無過失(no-fault)のスキームで、ニュージーランドで事故によりケガをしたすべての人を、訪問者を含めてカバーするとされています。誰の過失かを問わない点が特徴で、自分の不注意による事故でも扱いは変わりません。ビザの種類や居住資格にも依存せず、ニュージーランドにいる間に起きた事故であることが基準になります。ただしカバーの具体的な範囲や自己負担の有無については本記事では扱っていないため、ACCの該当ページでご確認ください。

ACCがカバーしないものは何ですか?

大きく2つあります。ひとつは対象外と明示されている事故で、ACCは「ニュージーランドへ向かう途中、またはニュージーランドから離れる途中に起きた事故によるケガはカバーできません。それがニュージーランドの領海や領空の中であってもです」としています。船や航空機のタラップ、エアブリッジなどの上で起きた事故も対象外とされています。もうひとつ、より重要なのは、ACCが扱うのは「事故によるケガ」であり、病気は対象ではないという点です。インフルエンザや盲腸、持病の悪化は事故ではありません。ACC自身も「訪問者は、ACCがカバーしないものについて、依然として旅行保険が必要です」と記載しています。

オーストラリアで日本人はMedicareを使えますか?

相互医療協定(Reciprocal Health Care Agreements)による恩恵は受けられません。Services Australiaによれば、オーストラリアは11か国と協定を結んでおり、その内訳はベルギー、フィンランド、イタリア、マルタ、オランダ、ニュージーランド、英国、ノルウェー、アイルランド、スロベニア、スウェーデンです。日本はこの11か国に含まれていません。したがって治療費は原則として自己負担、または加入している保険による負担になります。「先進国だから医療は何とかなる」という前提では備えが不足する可能性があります。なお個別の受診方法や費用については本記事では扱っていません。

協定国であれば、どの国からの訪問者も同じ扱いですか?

同じではありません。Services Australiaの記載によれば、ニュージーランドとアイルランドからの訪問者はMedicareに登録しなくても公立病院サービスとPBS(医薬品給付制度)の医薬品にアクセスできますが、対象は公立病院のケアとPBS薬のみで、MBS(診療報酬表)のサービスは含まれないとされています。一方でイタリアからの訪問者は、滞在中6か月間Medicareのもとで医療を受けられる場合があるとされています。また全体に共通する除外として「公立病院または私立病院における私費患者としての治療費はカバーしない」「医療を受けることを目的として訪れる人は対象外」と明記されています。

ACCがあるなら、ニュージーランドでは保険は不要ですか?

そうではありません。ACC自身が「訪問者は、ACCがカバーしないものについて、依然として旅行保険が必要です」と記載しています。ACCが扱うのは事故によるケガであり、病気は対象外です。ワーホリ中に起こることの多くは、実は事故ではなく病気です。またニュージーランドへの往復の途上で起きた事故も対象外とされています。さらに国によってはビザの条件として保険加入が求められる場合があり、その場合は選択ではなく要件になります。保険に何を求めるかが渡航先によって変わる、と考えるのが実務的です。

カナダや英国の医療制度はどうなっていますか?

本記事では確認していないため扱っていません。カナダは州ごとに公的医療保険の制度が異なり、加入条件や待機期間も州によって変わります。英国にも独自の仕組みがあります。いずれも「国」ではなく「州・地域」の単位で確認する必要がある場合があります。本記事で扱ったのはニュージーランドのACCとオーストラリアの相互医療協定のみです。渡航先が決まったら、その国・州の公式ページで確認してください。なお海外保険の全体的な考え方や比較の観点については、別の記事で扱っています。

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本記事の制度・条件・金額は執筆時点で公開情報を確認したものです(確認日:2026年8月8日)。制度や料金は変更される場合があるため、実際の手続き・申請の前に各機関の公式情報を必ずご確認ください。本記事は法的・専門的な助言ではなく、特定の結果を保証するものではありません。