オーストラリアのワーホリの税金とタックスリターン|引かれすぎに気づけるかどうか【2026年版】

数字から言います。オーストラリアのワーキングホリデー(サブクラス417・462)で働くと、登録された雇用主のもとでは最初の45,000ドルまでが15%の税率で源泉徴収されます。これを超えた分にはより高い率が適用されます。

ところが、雇用主が登録していない場合は違います。その場合は非居住者の税率が適用され、30%から源泉徴収されます。同じ仕事、同じ賃金でも、雇用主の登録状況だけで手取りが変わるということです。

そしてもうひとつ、日本人だけが関係する例外規定があります。オーストラリア税務局(ATO)は、一定の条件を満たす国の国民について、ワーホリ税率ではなくオーストラリア居住者と同じ基準で課税される場合があるとしており、その対象国リストに日本が明記されています。

論点は1つです。あなたは源泉徴収された税金が、正しい金額だったかを確認しましたか。多く引かれていても、申告しなければ戻ってきません。

この記事は、オーストラリアでワーホリをする人・した人に向けて書いています。

この記事を書いている立場:運営者はカナダのワーキングホリデーで12ヶ月を過ごしましたが、オーストラリアには渡航経験がありません。本記事は体験談ではなく、オーストラリア税務局(ATO)の公開情報を確認して整理したものです。出典と確認日を各所に明記しています。税制は変更されます。また税務上の取り扱いは個人の事情によって異なります。本記事は税務助言ではありません。実際の判断にあたっては、必ずATOの公式情報をご確認のうえ、必要に応じて登録税理士等の専門家にご相談ください。

結論:まず押さえる5つ

項目内容
TFN(税務ファイル番号)必須ではないが、ないと税金が高くなる
源泉徴収の率登録雇用主なら最初の45,000ドルまで15%/未登録なら30%から
所得年度7月1日〜翌年6月30日。日本と違う
申告(タックスリターン)条件を満たせば不要。ただし控除や還付を求めるなら必要
スーパー(退職年金)雇用主に支払い義務。帰国後に請求できるが課税される

出典:オーストラリア税務局(ATO)「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))。制度は変更されます。申請・申告の前に必ずATOの公式情報でご確認ください。

①TFN:取らなくてもいいが、取らないと損をする

TFN(Tax File Number/税務ファイル番号)は、オーストラリアの税制度におけるあなたの個人番号です。

ATOの記載はこうです
「TFNを持つ必要はありませんが、持たない場合はより多くの税金を払うことになります」——つまり義務ではないが、持たないと不利になるということです。
申請は就労ビザを取得したあとにオンラインでできるとされています。
取得したら、勤務開始時に雇用主へ「TFN declaration」を提出します。これによって雇用主が源泉徴収する額を計算できます。
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))
ビザの種類は、必ず自分から伝えてください
ATOは、雇用主が417・462のビザかどうかを確認するとしたうえで、「正しく課税されるよう、あなたからも伝えるべき」としています。
伝わっていなければ、誤った率で源泉徴収される可能性があります。後から直すより、最初に伝えるほうが確実です。

②源泉徴収の率は「雇用主が登録しているか」で変わる

ここが、多くの人が知らないまま損をしている部分です。

登録されたWHM雇用主登録していない雇用主
適用される率最初の45,000ドルまで15%非居住者の税率(30%から)
45,000ドルを超えた分より高い率が適用される
1,000ドル稼いだ場合の源泉150ドル300ドル

出典:ATO「Working holiday makers」。同ページの例示に基づく。45,000ドルの区分は2020–21年度以降のもの(2019–20年度以前は37,000ドル)。(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))

雇用主の登録は、雇用主の義務です
ATOは「雇用主はWHMの雇用主としてATOに登録することが求められている」とし、「WHM本人が登録する必要はない」と明記しています。
つまり30%引かれているということは、雇用主が登録していない可能性があるということです。
やること:最初の給与明細で源泉徴収の率を確認してください。想定と違えば、その時点で雇用主に確認する。数ヶ月分たまってから気づくと、取り戻すのに申告が必要になります。
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))

③所得年度は7月1日〜6月30日

日本の1月〜12月とも、4月〜3月とも違います。オーストラリアの所得年度は7月1日に始まり、翌年6月30日に終わります。

この区切りが実務に効く場面
  • 渡航時期によって、年度をまたぐかが変わる:またぐと申告の対象年度が2つになります
  • 年度内の所得が分散する:1年間の収入でも、2つの年度に分かれれば各年度の課税所得は小さくなります
  • 6月30日より前に恒久的に出国する場合、早期に申告できるとATOは案内しています
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))

④タックスリターンは「必要な人」と「不要な人」がいる

ここは誤解が多い部分です。全員が申告するわけではありません。

ATOが示す「申告不要」の条件
次の両方に当てはまる場合、タックスリターンも non-lodgment advice も不要とされています。
  • ①所得のすべてが、WHMであった期間の給与・賃金であること
  • ②その年度の課税所得の合計が45,001ドル未満であること(2020–21年度以降)
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))
ただし「不要」と「したほうがいい」は別です
ATOは、控除(deductions)を申請したいなら申告が必要としています。また後述するNDA国の規定に当てはまる可能性がある場合も、申告を検討する対象として案内されています。
つまり「申告義務がない」ことと「申告すると戻る可能性がある」ことは、まったく別の話です。義務がないからと何もしないと、戻るはずの税金がそのままになります。

⑤日本人が関係する例外:NDA国の規定

ここが、この記事で最も重要な部分です。日本語で書かれた情報がほとんどないため、詳しく書きます。

ATOは、対象国リストに日本を明記しています
ATOは、一定の条件を満たすワーキングホリデーメーカーについて、ワーホリ税率ではなく「オーストラリア居住者と同じ基準」で課税され得るとしています。根拠は2021年11月3日の高等法院判決(Addy v Commissioner of Taxation)です。

対象となる条件は、次のすべてを満たすこととされています。
  • ①417または462のビザを保持していること
  • ②その所得年度の全部または一部について、税務上のオーストラリア居住者であること
  • ③適格なNDA国の国民であること
そして③の適格国リストに挙げられているのは、チリ、フィンランド、ドイツ、イスラエル(2020–21年度以降)、日本、ノルウェー、トルコ、イギリスです。
出典:ATO「Taxation of Australian resident WHMs from NDA countries」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))

条件を満たす場合、ATOは「オーストラリア居住者として課税された場合」と「ワーホリとして課税された場合」の、低いほうの税額になるとしています。給与からは15%で源泉徴収され続けるため、差額があれば申告によって還付を受けられる構造です。

ところが、②の条件が最大の壁です
ATOは「ほとんどのワーキングホリデーメーカーは、税務上の非居住者である」と明記しています。理由も書かれています。「休暇の目的でオーストラリアに来た人は、そこで働いていたとしても、一般にオーストラリアの居住者にはならない」からです。

つまり「日本人だから還付される」ということでは、まったくありません。日本国籍は3つの条件のうち1つを満たすにすぎず、税務上の居住者と認められるかどうかが実際の分かれ目です。

さらに重要な注意があります。ATOは、申告書で自分を居住者と記載してもそれを受け入れるとは限らず、内容を確認する場合があるとしています。そして居住者と認められなかった場合はワーホリ税率が適用され、源泉徴収が15%未満だった場合には追加で納税が必要になることがあると警告しています。
「居住者であると確信できる場合に限って申告すべきで、不明なら問い合わせるように」というのがATOの案内です。
出典:ATO「Taxation of Australian resident WHMs from NDA countries」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))
この規定の扱い方
  • ①「日本人は還付される」という情報を鵜呑みにしない:条件は3つあり、居住者判定が核心です
  • ②自分が税務上の居住者に当たるかを、ATOの基準で確認する:滞在の目的と実態で判断されます
  • ③判断がつかないなら、ATOに問い合わせるか登録税理士に相談する誤った申告は追加納税につながり得ます
  • ④過去の年度についても、期間内なら修正の余地があるとATOは案内しています
本記事は税務助言ではありません。該当する可能性を知ったうえで、判断は必ず公式情報と専門家によってください。

カナダ・ニュージーランドを含めた3ヶ国の比較は現地の税金の基本の記事で扱っています。本記事はオーストラリアに絞った深掘りです。

申告するかどうかの判断表

あなたの状況申告の要否理由
所得はWHM給与のみ/課税所得が45,001ドル未満義務なしATOが示す不要条件の両方を満たす
同上だが、控除を申請したい必要控除の申請には申告が要る
課税所得が45,001ドル以上必要不要条件を満たさない
給与以外の所得がある必要「所得のすべてがWHM給与」に当たらない
未登録の雇用主に30%引かれていた検討する払いすぎがあれば申告で精算し得る
税務上の居住者に当たる可能性がある慎重に検討NDA国の規定。ただし居住者判定が前提
6月30日前に恒久的に出国する早期申告が可能ATOが案内している

出典:ATO「Working holiday makers」「Taxation of Australian resident WHMs from NDA countries」(確認日:2026年8月13日)。本表は判断の目安であり、税務助言ではありません。個別の事情によって取り扱いは異なります。

⑥スーパー(退職年金)は帰国後に請求できる

ATOは、WHMの雇用主にもスーパーアニュエーション(退職年金)の支払い義務があるとしています。つまり給与とは別に、積み立てられている可能性があります。

DASP(出国時のスーパー支払い)
オーストラリアを離れて帰国したあと、要件を満たせばスーパーを受け取る申請ができるとされています。これがDASP(Departing Australia Superannuation Payment)です。
申請はオーストラリアを出国したあとに行います。
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))
ただし税率に注意してください
ATOは、2017年7月1日以降にWHMに対して行われるDASPへの課税は65%であるとしています。
積み立てられた全額が戻るわけではないということです。受け取れる金額を見積もるときは、この点を計算に入れてください。
それでも請求しなければゼロです。手続きの手間と受け取れる額を比べて判断してください。
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))

⑦源泉徴収の記録をどう確認するか

申告するにも、正しく引かれているかを確かめるにも、記録が必要です。

インカムステートメント
ATOによると、雇用主は通常Single Touch Payroll(STP)を通じてインカムステートメントを提供します。そこには稼いだ額、源泉徴収された税額、支払われたスーパーが示されます。
これはmyGov経由でATOのオンラインサービスから確認できるとされています。STPを使っていない雇用主の場合は、payment summary が提供されます。
出典:ATO「Working holiday makers」(確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日))
複数の職場で働いた人ほど、記録が要ります
ワーホリでは短期の仕事を重ねる人が多く、雇用主ごとに登録状況も源泉徴収の率も違い得ます。1つの職場だけ30%引かれていた、ということが起こります。
やること:職場を離れるたびに、給与明細と源泉徴収額を自分で保存しておく。後からまとめて確認するのは、帰国後だと特に大変です。職場トラブル全般への備えは職場トラブルの記事で扱っています。

よくある失敗

失敗①:TFNを取らずに働き始める

ATOは「持つ必要はないが、持たない場合はより多くの税金を払うことになる」としています。就労ビザを取ったら早めに申請してください。

失敗②:源泉徴収の率を確認しない

登録雇用主なら15%、未登録なら30%からです。最初の給与明細で必ず確認してください。数ヶ月放置すると、取り戻すのに申告が必要になります。

失敗③:ビザの種類を雇用主に伝えない

ATOは本人からも伝えるべきとしています。誤った率で徴収されるのを防げます。

失敗④:「申告不要」を「何もしなくていい」と読む

控除を申請したいなら申告が必要です。義務がないことと、申告すると戻る可能性があることは別の話です。

失敗⑤:「日本人だから還付される」と思い込む

日本国籍は3条件のうち1つにすぎず、税務上の居住者と認められるかが分かれ目です。ATOはほとんどのWHMが非居住者だとしています。誤った申告は追加納税につながり得ます。

失敗⑥:スーパーを請求せずに帰国する

65%という課税率はありますが、請求しなければゼロです。受け取れる額を確認してから判断してください。

失敗⑦:給与明細を保存しない

複数の職場で働くほど記録が重要になります。帰国後にまとめて確認するのは非常に大変です。

今日からできる3つのこと

  • ①就労ビザを取ったら、TFNの申請方法をATOのページで確認する
  • ②最初の給与明細で、源泉徴収の率を確認する15%か30%かで手取りが変わります
  • ③給与明細を職場ごとに保存する仕組みを作る:クラウドに入れるだけで十分です

税金は、知らなくても働けます。ところが知らないままだと、多く引かれたまま気づかずに帰国することになります。

確認すべきは3つだけです。TFN、源泉徴収の率、そして記録。ここを押さえておけば、あとから選択肢が残ります。

本記事は税務助言ではありません。記載内容はオーストラリア税務局(ATO)の公開情報を確認日:2026年8月13日(該当ページの最終更新:2026年6月3日)に確認して整理したものであり、税制および取り扱いは変更されます。また税務上の居住性の判定をはじめ、適用される内容は個人の事情によって異なります。金額・税率・区分はいずれも本記事の確認時点のものであり、将来にわたって保証されるものではありません。実際の申告・判断にあたっては、必ずATOの公式情報をご確認のうえ、必要に応じてオーストラリアの登録税理士等の専門家にご相談ください。
主な出典:ATO「Working holiday makers」/ATO「Taxation of Australian resident WHMs from NDA countries」

よくある質問

オーストラリアのワーホリで税金はいくら引かれますか?

ATOによると、雇用主がワーキングホリデーメーカーの雇用主として登録されている場合、最初の45,000ドルまでが15%の税率で源泉徴収されます(2020-21年度以降。それ以前は37,000ドル)。これを超えた分にはより高い率が適用されます。一方、雇用主が登録していない場合は非居住者の税率が適用され、30%から源泉徴収されます。同じ賃金でも雇用主の登録状況で手取りが変わるため、最初の給与明細で率を確認してください。

TFN(税務ファイル番号)は必ず必要ですか?

ATOは「TFNを持つ必要はないが、持たない場合はより多くの税金を払うことになる」としています。つまり義務ではありませんが、取得しないと不利になります。申請は就労ビザを取得したあとにオンラインでできるとされており、取得したら勤務開始時に雇用主へTFN declarationを提出します。

タックスリターン(確定申告)は必要ですか?

ATOによると、所得のすべてがワーホリ期間中の給与・賃金であり、かつその年度の課税所得の合計が45,001ドル未満(2020-21年度以降)である場合、両方を満たせば申告もnon-lodgment adviceも不要とされています。ただし控除を申請したい場合は申告が必要です。申告義務がないことと、申告すると還付される可能性があることは別の話なので、注意してください。

オーストラリアの所得年度はいつからいつまでですか?

7月1日に始まり、翌年6月30日に終わります。日本の暦年とは異なるため、渡航時期によっては1年の滞在でも2つの年度にまたがります。またATOは、6月30日より前にオーストラリアを恒久的に離れる場合、早期にタックスリターンを提出できると案内しています。

日本人はワーホリでも還付を受けられると聞きましたが本当ですか?

条件付きで該当し得ますが、鵜呑みにしないでください。ATOは、417または462のビザ保持者で、その年度の全部または一部について税務上のオーストラリア居住者であり、かつ適格なNDA国の国民である場合、オーストラリア居住者と同じ基準で課税され得るとしています。そしてその適格国リストに日本が含まれています。ただしATOは同時に、ほとんどのワーホリは税務上の非居住者であり、休暇目的で来た人は働いていても一般に居住者にはならないと明記しています。日本国籍は3条件のうち1つにすぎず、居住者と認められるかが分かれ目です。居住者と認められなかった場合、追加納税が必要になることもあるとATOは警告しています。

帰国後にスーパー(退職年金)は受け取れますか?

ATOによると、オーストラリアを離れて帰国したあと、要件を満たせばDASP(Departing Australia Superannuation Payment)として受け取る申請ができます。申請は出国後に行います。ただし2017年7月1日以降にワーホリに対して行われるDASPへの課税は65%とされているため、積み立てられた全額が戻るわけではありません。それでも請求しなければゼロなので、金額を確認してから判断してください。

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