数字から言います。ただし、その前に伝えるべきことがあります。
オーストラリアには「最低賃金」が2種類あります。ひとつは全国最低賃金(National Minimum Wage)。もうひとつはアワード(award)と呼ばれる、業種・職種ごとに定められた最低賃金です。
そして重要なのは、ワーホリで働く人の多くはアワードの側が適用されるということです。Fair Work Ombudsman(公正労働オンブズマン)は「国の労使関係制度にいる従業員の大半はアワードの対象」とし、「アワードの対象なら、全国最低賃金ではなくアワードの最低賃金が適用される」と明記しています。
つまり「オーストラリアの最低賃金は◯◯ドル」という一文だけでは、あなたの時給の下限は分かりません。カフェで働くのか、農場で働くのか、小売なのかで、適用される表が変わります。
論点は1つです。あなたに適用されるのは、どちらの最低賃金ですか。
この記事は、オーストラリアで働く予定の人に向けて書いています。
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この記事を書いている立場:運営者はカナダのワーキング・ホリデーで12ヶ月を過ごしましたが、オーストラリアには渡航していません。現地で働いた経験はないため、賃金交渉や職場の実情については書きません。本記事は制度の枠組みをFair Work Ombudsmanの公表資料から整理したものです。
金額については、本文中で「一次情報で確認できた数値」と「確認できなかった数値」を分けて明示します。賃金額は毎年改定されるため、必ずFair Work Ombudsmanの公式ツールでご自身の額を確認してください。
本記事は法的助言ではありません。個別の賃金トラブルについては、Fair Work Ombudsmanまたは専門家にご相談ください。
結論:適用される表が2種類あります
| 全国最低賃金 | アワード(award) | |
|---|---|---|
| 対象 | アワードにも企業協定にも該当しない人 | 該当する業種・職種の人(大半) |
| 金額 | 全国一律 | 業種・職種・経験で変わる |
| 含まれるもの | 基本の時給 | 時給に加え、割増(penalty rates)や手当 |
| 調べ方 | 公表値を見る | 公式ツール(PACT)で検索 |
Fair Work Ombudsmanの記載
「全国最低賃金は、アワードにも登録協定にも該当しない従業員に適用される」とされています。そして「国の労使関係制度にいる従業員の大半はアワードの対象である」とも記載されています。
つまり全国最低賃金は、あくまで「該当しない人」向けの下限です。カフェ、レストラン、小売、農業——これらにはそれぞれのアワードがあります。
さらに注意すべき記載があります。Fair Workは「アワードの賃率が全国最低賃金より低い場合がある」とし、例として新規就業者向けの導入時レート(introductory rates)を挙げています。つまり「全国最低賃金より下」が合法に成立する場合があります。
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2026年7月1日からの全国最低賃金
- 時給 $26.44
- 週給 $1,004.90(フルタイム38時間・税引前)
- カジュアル 時給$33.05(25%のカジュアル・ローディングを含む)
実際に確認したところ、Fair Work Ombudsmanのサイト内でも、一部のページには改定前の金額が表示されたままになっていました。年に一度の改定なので、7月をまたぐ時期はこれが起こります。
だから、この記事に書いた金額も含めて「読んだ数字をそのまま信じない」のが正解です。次の見出しで説明するPay Calculator(PACT)で自分のアワードを引くのが、何年後でも正しい額にたどり着く唯一の方法になります。
公式ツール(PACT)で自分の額を調べる
これがこの記事で最も実用的な部分です
Fair Work OmbudsmanはPay and Conditions Tool(PACT/Pay Calculator)を提供しており、自分のアワードにおける最低賃率、割増賃金、各種手当を計算できると案内しています。
使う手順:①Fair Work Ombudsmanの公式サイトでPay Calculatorを開く ②業種または職種を選ぶ(アワードの特定) ③雇用形態を選ぶ(フルタイム/パートタイム/カジュアル) ④年齢や経験の区分を選ぶ ⑤時間帯・曜日を入力する。
⑤が重要です。アワードには割増賃金(penalty rates)が定められており、夜間・週末・祝日は基本の時給より高くなる場合があります。「時給いくら」だけを見ていると、この部分が抜けます。
そしてFair Workは、アワードごとの最低賃率をまとめた「Pay guides」をダウンロードできる形で提供しているとしています。紙で持っておくと、雇用主との認識合わせに使えます。
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ワーホリで最も多い雇用形態です
Fair Work Ombudsmanは、全国最低賃金の対象となるカジュアル従業員には25%のカジュアル・ローディングが加算されると記載しています。アワードにもカジュアル・ローディングの定めがあるとされています。
この25%は「おまけ」ではありません。カジュアル雇用は有給休暇や病気休暇、解雇予告、整理解雇手当などが付かないため、その分を賃金で補う仕組みです。
だから確認すべきは2点です。①自分の雇用形態がカジュアルか ②提示された時給にローディングが含まれているか。
「時給◯◯ドル」と言われたとき、それがローディング込みなのか別なのかで、手取りが変わります。雇用契約書か、給与明細(payslip)で確認してください。
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ファクトシートには「従業員は、たとえ本人が同意したとしても、適用される最低賃金を下回る額で支払われることはできない」という趣旨が記載されています。
これは重要です。「最初の3か月は研修期間だから安く」「現金払いだから安く」といった提案があっても、それが最低賃金を下回るなら、同意の有無にかかわらず認められません。
そして外務省も注意喚起しています。ワーキング・ホリデー制度を利用して渡航した人から「不当に安い賃金で働かされた」という情報が寄せられているとして、現地の労働法規を含めて前もって情報収集するよう勧めています。
やること:①働き始める前にPACTで自分の下限を調べる ②給与明細を毎回保管する ③不審な点があればFair Work Ombudsmanに相談する。Fair Workは職場の問題解決に関する情報とツールを提供しているとしています。権利の考え方は労働者の権利の記事、職場トラブルは職場トラブルの記事で扱っています。
改定は毎年7月です
タイミングを知っておくと混乱しません
Fair Work Ombudsmanによれば、毎年Fair Work Commissionの専門家パネルが全国最低賃金とアワードの最低賃率を見直し(Annual Wage Review)、変更は原則として7月1日以降の最初の完全な給与期間から適用されるとされています。
つまり「7月1日から即日」ではありません。給与期間の区切りによっては、数日から2週間ほど遅れて反映されます。
そしてこの時期は、ネット上の情報が新旧入り混じります。本記事で数値を断定しなかったのも、この構造が理由です。
だから渡航前と、7月をまたぐタイミングの2回、公式で確認してください。賃金が上がったのに古い額のまま支払われている、という状況に気づけます。
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この記事で数字を断定しなかった理由
運営者はオーストラリアに行っていません。だから現地の賃金の実感は語れません。語れるのは、資料を読んで分かったことだけです。
今回、Fair Work Ombudsmanの資料を読んで驚いたのは、「オーストラリアの最低賃金は◯◯ドル」という書き方が、そもそも正確ではないということでした。大半の人にはアワードが適用され、そこには業種別の表と、時間帯ごとの割増がある。1つの数字では表せない構造です。
そして金額そのものは、毎年変わります。実際、今回も一次情報と民間情報で数字が食い違いました。この記事を1年後に読む人にとって、金額の記述は古くなっています。
だから持ち帰ってほしいのは、金額ではなく調べ方です。PACTで自分のアワードを選び、雇用形態と時間帯を入れて、自分の下限を出す。この操作を覚えれば、何年後でも正しい額が分かります。
運営者がカナダで働いていたとき、正直なところ最低賃金の根拠を調べたことはありませんでした。提示された時給を受け入れて働いていた。問題は起きませんでしたが、それは確認したからではなく、たまたまです。調べ方を知っていれば、確認は3分で済みました。
カナダの最低賃金は州ごとに違います
カナダには連邦最低賃金と州・準州の最低賃金の2階建てがあり、政府の一覧には州の額が連邦より高ければ高いほうを支払うという趣旨の注記があります。同一覧ではアルバータ州が2019年6月26日発効のまま据え置かれる一方、他州は2023〜2024年に改定されています。バンクーバーとカルガリーでは下限が違うということです。詳しくはカナダの最低賃金の調べ方で整理しました。
リーフのツアー代には、法定の環境管理チャージが入っています
グレートバリアリーフ海洋公園局によれば、標準的な観光プログラムの環境管理チャージ(EMC)はフルデー$8.00/パートデー$4.00。分かれ目は3時間です。そしてEMCについて虚偽・誤解を招く表示をすることは海洋公園法のもとで刑事犯罪とされ、事業者には正しく表示する義務があります。詳しくはグレートバリアリーフの環境管理チャージで整理しました。
カジュアル雇用では、開始時に書類を2通受け取ります
公正労働オンブズマンによれば、雇用主は新規カジュアル従業員にCasual Employment Information Statement(CEIS)とFair Work Information Statement(FWIS)を渡す義務があります(公正労働法第125A条・第125B条)。CEISは複数の言語でも提供されています。詳しくは豪州のカジュアル雇用と2つの書類で整理しました。
英国の法定最低通知期間は勤続12年以上で12週間、オーストラリアは5年超の4週間が上限(45歳超・勤続2年以上でさらに1週間)。ワーホリの1年ならどちらも基本は1週間で、豪州には「通知に代わる支払い」という形もあります。
→ 雇用を終わらせるときの通知期間|英国の12週と、豪州の4週
採用の可否は、経歴より「一緒に働けそうか」で決まる業種があります。そしてその印象は、最初のやり取りの数十秒で作られます。
① 話す回数を積む|ネイティブキャンプ
予約なしで回数を重ねられる形式です。読んで理解できることと、その場で口に出せることは別の能力です。渡航前に場数を踏んでおく用途に向きます。
ネイティブキャンプを見る →
カナダと豪州は、費用も時給も仕事の見つかり方も違います。2か国で迷っている段階なら、条件を並べてから決めるほうが早く進みます。
豪州で働いたなら、年金(スーパー)が積み立てられています
帰国後にDASPとして請求できます。ただしワーホリの税率は65%(通常は35%・45%)。しかも書類の認証と口座は、帰国前にしか手当てできません。
よくある失敗
失敗①:「全国最低賃金」だけを見る
大半の人にはアワードが適用されます。業種によって表が違います。
失敗②:割増賃金を計算に入れない
アワードには夜間・週末・祝日の割増が定められている場合があります。
失敗③:カジュアル・ローディングの有無を確認しない
提示額に25%が含まれているか別かで手取りが変わります。
失敗④:「同意したから」と受け入れる
本人が同意しても最低賃金を下回る支払いは認められないとされています。
失敗⑤:ネットの金額を鵜呑みにする
改定期は情報が入り混じります。公式ツールで確認してください。
失敗⑥:給与明細を保管しない
問題が起きたとき、記録がないと主張できません。
今日からできる3つのこと
- ①Fair Work OmbudsmanのPay Calculator(PACT)を開いてみる:操作を覚えるのが目的です
- ②働く予定の業種のアワードを調べる:カフェ・農業・小売で表が違います
- ③雇用形態を確認する:カジュアルなら25%加算の対象です
オーストラリアの最低賃金は、1つの数字では表せません。全国最低賃金とアワードの2階建てで、さらに時間帯の割増と雇用形態の加算が乗ります。
だから「いくら?」より「どう調べるか」を持ち帰ってください。公式ツールで3分。それが、何年後でも正しい額にたどり着く唯一の方法です。
本記事の制度に関する記述は、Fair Work Ombudsman(オーストラリア公正労働オンブズマン)が公表しているファクトシート「Minimum wages」および同機関の関連ページにもとづきます(2026年8月時点で確認)。金額は、Fair Work Ombudsmanが2026年7月1日付で公表した改定(全国最低賃金 時給$26.44/週$1,004.90/カジュアル$33.05)にもとづきます(2026年8月確認)。ただし同サイト内でも改定前の金額が残っているページがあり、金額は毎年改定されます。アワードごとの具体的な賃率、割増賃金、手当の額についても、業種・職種・雇用形態・時間帯によって異なり本記事では扱っていません。賃金額は毎年改定され、変更は原則として7月1日以降の最初の完全な給与期間から適用されます。必ずFair Work OmbudsmanのPay Calculator(PACT)および公式サイトでご自身に適用される額を確認してください。本記事は法的助言ではありません。個別の賃金トラブルについてはFair Work Ombudsmanまたは専門家にご相談ください。
よくある質問
オーストラリアの最低賃金はいくらですか?
1つの数字では表せません。オーストラリアには全国最低賃金(National Minimum Wage)と、業種・職種ごとに定められたアワード(award)の2種類があり、Fair Work Ombudsmanは国の労使関係制度にいる従業員の大半はアワードの対象であるとしています。アワードの対象ならアワードの最低賃金が適用されます。金額の目安としては、Fair Work Ombudsmanが2026年7月1日付で公表した改定により、全国最低賃金は時給$26.44、週$1,004.90(38時間・税引前)、カジュアルは25%のローディングを含めて時給$33.05です(2026年8月確認)。ただしアワードの対象ならその金額が適用されるため、必ずPay Calculatorでご自身の業種を確認してください。
自分の最低時給はどうやって調べますか?
Fair Work OmbudsmanのPay and Conditions Tool(PACT/Pay Calculator)を使います。手順は、公式サイトでPay Calculatorを開き、業種または職種を選んでアワードを特定し、雇用形態(フルタイム/パートタイム/カジュアル)を選び、年齢や経験の区分を選び、時間帯・曜日を入力する流れです。とくに時間帯の入力が重要で、アワードには割増賃金(penalty rates)が定められており、夜間・週末・祝日は基本の時給より高くなる場合があります。またアワードごとの最低賃率をまとめたPay guidesもダウンロードできる形で提供されています。
カジュアル雇用だと時給は上がりますか?
Fair Work Ombudsmanは、全国最低賃金の対象となるカジュアル従業員には25%のカジュアル・ローディングが加算されると記載しており、アワードにもカジュアル・ローディングの定めがあるとしています。ただしこれは上乗せの優遇ではなく、カジュアル雇用には有給休暇や病気休暇、解雇予告、整理解雇手当などが付かないため、その分を賃金で補う仕組みです。確認すべきは、自分の雇用形態がカジュアルかどうかと、提示された時給にローディングが含まれているか別かの2点です。雇用契約書か給与明細で確認してください。
最低賃金より安く働くことに同意してもいいですか?
認められません。Fair Work Ombudsmanのファクトシートには、従業員は本人が同意したとしても適用される最低賃金を下回る額で支払われることはできないという趣旨が記載されています。「最初の3か月は研修期間だから安く」「現金払いだから安く」といった提案があっても、それが最低賃金を下回るなら同意の有無にかかわらず認められません。なお外務省も、ワーキング・ホリデーで渡航した人から不当に安い賃金で働かされたという情報が寄せられているとして、現地の労働法規を含めて前もって情報収集するよう勧めています。
賃金はいつ改定されますか?
毎年7月です。Fair Work Ombudsmanによれば、Fair Work Commissionの専門家パネルが毎年、全国最低賃金とアワードの最低賃率を見直し(Annual Wage Review)、変更は原則として7月1日以降の最初の完全な給与期間から適用されるとされています。つまり7月1日から即日ではなく、給与期間の区切りによっては数日から2週間ほど遅れて反映されます。またこの時期はネット上の情報が新旧入り混じるため、渡航前と7月をまたぐタイミングの2回、公式で確認することをお勧めします。
アワードの賃金が全国最低賃金より低いことはありますか?
あり得ます。Fair Work Ombudsmanは、アワードの賃率が全国最低賃金より低い場合があるとし、例として新規就業者向けの導入時レート(introductory rates)を挙げています。これらは通常、次の等級に上がるまでの限られた期間に適用されるとされています。つまり「全国最低賃金より下」が合法に成立する場合があるということです。ただしその場合でも、適用されるアワードの最低賃率を下回ることはできません。自分にどのアワードのどの等級が適用されるかは、Pay Calculatorで確認してください。
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本記事の制度・条件・金額は執筆時点で公開情報を確認したものです(確認日:2026年8月8日)。制度や料金は変更される場合があるため、実際の手続き・申請の前に各機関の公式情報を必ずご確認ください。本記事は法的・専門的な助言ではなく、特定の結果を保証するものではありません。